アスベスト含有の外壁を塗装する際の危険性・見分け方を解説
アスベストは人体に影響を及ぼす危険があります。ここ数年はアスベストの使用を禁止されているため、安全な建物がほとんどです。しかし、法律の改正前の建物は、アスベストを使用している可能性があるので、注意する必要があります。今回は、アスベストの見分け方をご紹介します。また、アスベスト含有の建物の塗装についても解説します。
アスベストの危険性
人体に危険性のあるアスベストですが、そもそもアスベストとはどのようなものなのでしょうか。アスベストの基本的な知識を把握して、正しい対応方法を身につけましょう。また、アスベストの危険についても紹介します。
アスベストとは
アスベストは別名「石綿」と呼ばれています。天然鉱物で、かなり細かい繊維状の物質です。熱や摩擦に強く、酸性・アルカリ性に対する耐性も優れていることが特徴です。比較的、価格も安かったため、昭和50年頃までは多くの建築で使われていました。
アスベストは6種類ある
アスベストは以下の6種類あります。
・クロシドライト
・アモサイト
・クリソタイル
・アクチノライト
・トレモライト
・アンソフィライト
以前のアスベストは日本でよく使われるクロシドライト、アモサイト、クリソタイルの3種類でした。クロシドライトは毒性の強い物質で、建物の内装などに使われています。アモサイトは断熱保温材に優れ、クリソタイルは世界各国で使われているアスベストです。
そして、平成20年にはトレモライト、アクチノライト、アンソフィライトが追加されました。トレモライトやアクチノライトは日本での使用はほとんどなく、アンソフィライト耐薬品性の高いアスベストです。現在は6種類ですが、今後も増えていく可能性は十分にあります。
アスベストの危険性は健康被害にある
アスベストは非常に細かい繊細でできています。微細な物質は空気に舞いやすく、簡単に人のなかに侵入します。そこから肺に到達しますが、大量のアスベストを吸った場合は、すべてが体外に排出されることはありません。
肺に残り続け、20〜40年の時間を経て肺がんや悪性中皮腫などの病気を発症する可能性があります。人体に侵入してすぐ症状が出るわけではないので、長い時間を過ぎてはじめて、アスベストを吸っていたことに気がつくケースも多く見られます。
アスベスト含有の外壁は塗装してもいい?
アスベスト含有の外壁塗装は可能です。外壁塗装をする際は、主に塗装・重ね張り・張替の3つの方法から選べます。どんな手法があるのか順に見ていきましょう。
塗装
塗装は、アスベストを含んだ外壁の上から塗装してカバーする方法です。今回紹介する方法のなかで、最も安い費用でできるため、コストを抑えたい方に人気があります。ただし、アスベストは残った状態なので、もし、建物が倒壊した場合は飛散する場合があり、体内に侵入する可能性があるため、注意が必要です。
また、外壁に目立つ傷や劣化があると、塗装はできないことも頭に入れておきましょう。塗装そのものは塗るだけなので、工事中にアスベストが飛ぶ可能性はありません。
重ね張り(カバー工法)
重ね張りは、アスベストの外壁の上から新しい外壁材を重ねる方法です。こちらも塗装同様、アスベストは残ったままなので注意が必要です。比較的、費用は安いですが、いずれ解体が必要になった場合に費用がかさむかもしれません。また、外壁材を重ねる場所である下地の汚れがひどいと、重ね張りでメンテナンスができないため、気をつけましょう。
張替
張替は、アスベストの外壁を完全に取り除いて新しい外壁材にする方法です。アスベストを建物から除去できるので、将来建物が倒壊してもアスベストが飛散することはありません。最も費用はかかりますが、この先も建物に住み続ける場合は、張替をしておくと、万が一の自然災害による倒壊からのアスベスト飛散も防げるでしょう。外壁材、下地に大きなダメージを受けている建物は、張替の手法でメンテナンスを実施します。
外壁塗装にかかる費用
アスベストのメンテナンスを塗装で行う場合、塗料や坪数によって費用は異なります。最も使われるシリコン塗料でメンテナンスをする際は、20坪で50万円前後の費用がかかります。
アスベスト含有する場合は絶対に処理する必要がある?
アスベストを含んだ建物を絶対に除去しなければいけないことはありません。しかし、地震や台風などで建物が倒壊した場合、アスベストが空気中に飛び散る可能性が非常に高くなります。
そうした事態を考えると、アスベストの処理は済ませておくと安心ですが、どうしても費用が高額になるため、金銭的に余裕がないときに無理して除去することは、望ましくないでしょう。まとまった費用の用意が難しい場合は、塗装や重ね張りで一時的なメンテナンスを行います。費用に余裕がある方は、張替を選び、建物からアスベストをなくしましょう。
アスベストが含まれているか見分ける方法
アスベストが含まれているか見分ける方法として、以下の3点があります。
建物を建築したタイミング
アスベストの有無については、建物が建築された時期でチェックできます。アスベストが禁止されたのは、1975年の特定科学物質等障害予防規則の改正です。この改正では、アスベストの含有率を5%超える建築が禁止されました。そのため、1975年より前の建物は、アスベストを含んだ建物だと判断できます。
また、2006年の改正では、アスベストの含有率0.1%を超える建築が禁止され、よりアスベストに厳しくなりました。
設計図書
建物の設計図書が残っている場合、設計図書にアスベストの有無について記されていることがあります。設計図書は、工事に必要な構造や工事の詳細を記載した設計図、または仕様書です。そのため、設計図書に書かれている使用材料から、アスベストの含有について調べることが可能です。
専門業者に調査を依頼
確実にアスベストの有無を知りたい場合は、専門業者に依頼しましょう。調査方法はさまざまで、主に、定性分析・定量分析・濃度分析の3つが使われます。定性分析は、偏光顕微鏡などでアスベストの有無を調べます。一方で定量分析は、アスベストの含有率を調べる方法です。一般的には、定性分析でアスベストを確認してから定量分析で含有率がどのくらいなのかチェックします。
最後に濃度分析は空気に舞うアスベストを調べます。外壁材などを少し取って検査を実施します。外壁材を取るとき、アスベストが空気中に舞う危険性があるため、アスベストを防ぐことのできるマスクなどで準備してから分析に入ります。無防備の状態では危険なので、しっかり対策を講じましょう。
アスベスト調査に必要な費用
アスベストの調査に必要な費用は業者ごとで異なりますが、25万円前後かかります。安い金額ではないので、複数社に見積もりを出してもらい、比較してから自分に適した専門業者を選びましょう。
アスベスト調査を実施する業者の選び方は、明確な料金の提示、適切な報告書の作成実績、調査に欠かせない資格を保有している、以上の3点をチェックしてください。資格については、建築物石綿含有建材調査者や、石綿分析技術の評価事業によるAランクまたはBランクの認定分析技術者などを保有しているか業者に確認しましょう。
まとめ
アスベストは人体に危害を与える危険性があります。アスベストが空気に浮遊しなければ人体に入ることはありません。簡単に言い換えると、建物の解体をしなければ人体に大きな影響を与える可能性は低いでしょう。
しかし、自然災害による建物の倒壊など、思わぬところで建物が倒壊するかもしれないため、早めに撤去することが望ましいところです。自宅などでアスベストが使われているか調べたい場合は、建在の名前や型番を国のデータベースで検索しましょう。わからない方は、専門業者に依頼するなどで調べることが可能です。