ニチハパミールは塗装してはいけない!その理由と見分け方

公開日:2023/06/15  最終更新日:2023/04/21


ニチハパミールは、屋根材のひとつです。一般的に屋根材は10〜15年ごとの再塗装によるメンテナンスが推奨されています。しかし、ニチハパミールを使っている場合、再塗装によるメンテナンスは危険です。本記事は、ニチハパミールについて、塗装してはいけない理由と見分ける方法を解説します。

ニチハパミールとは

ニチハパミールとは、建材メーカーであるニチハが、1996年〜2008年にかけて製造していた屋根材のひとつです。なお、現在は製造が中止されています。1990年代は、アスベストによる健康被害が問題とされていた時期で2004年にはアスベストを1%以上含む、製品販売は原則禁止されました。

アスベスト問題を背景として当時、建材メーカーは、アスベストを含まないスレートの製造をはじめました。ノンアスベスト製品のひとつが、ニチハパミールなのです。ニチハパミールは、ニチハの製品として、全国に広く普及し人気を博していました。

一方、年数が経つにつれ、クラックや剥がれなどの不具合が報告されていました。劣化の問題は、ニチハパミールだけでなく、同時期に販売された他のノンアスベスト製品でも起きていましたが、最も深刻な被害がニチハパミールに出たとされています。ニチハパミールでは層状(ミルフィーユ状)に屋根材が剥がれる症状が起こり、仮に再塗装したとしても本体ごと剥がれてしまうため、修繕自体が困難という問題がありました。

なお、上記の問題はニチハ側の検証不足にあったとされています。当時は、アスベストを素材から外した新商品の開発が急務であり、長期的な検証を行わずに、新商品が販売されていました。

そのため、実際に使用してから早期に劣化する問題が発生したと考えられています。ニチハは、ニチハパミールの不具合は、経年劣化によるものであるとの判断をしており、リコール対応は行っていません。現在でも、スレート屋根の保証は一般的に製品保証であり、クラックや剥がれなどの症状は保証対象外です。

ニチハパミールは塗装できない理由

通常、化粧スレート材は、施工から10年ほどで塗膜が劣化し、苔や色褪せなどが目立ち再塗装のタイミングがきます。一方、ニチハパミールは通常行うはずの再塗装ができません。以下では、ニチハパミールが再塗装できない理由について紹介します。

層間剥離を起こしやすい

層間剥離とは、複数の層を重ねた材料同士が剥離してしまうことをいいます。このニチハパミールは、抄造法(しょうぞうほう)という、薄い板を一枚ずつ重ね合わせた方法でつくられています。抄造法は、層を重ねることで部材の強度を上げられるため、建築材料でよく用いられている方法です。

一方、重ね合わせた層間に水分が入ると、接着と力が低下し層同士が剥離してしまう可能性があります。とくに、雨や紫外線など外気の影響をうけやすい屋根材では、水分が入り込みやすく、層間剥離が起こりやすいのです。このように、層間剥離が起きてしまうと、材料自体が剥がれ落ちてしまうため、再塗装ではなく、部材の交換が必要となります。

釘の腐食

釘の腐食もニチハパミールが再塗装できない理由です。ニチハパミールには、耐食性処理を施したラスパート釘が使われています。このラスパート釘の中にめっき層不足の釘が入っていたことが、明らかになったのです。

めっき層が薄い釘は、通常の釘と比べて錆びや腐食を起こしやすく、腐食した釘では部材を固定できないため、屋根材が急に落下する可能性があります。とくに、急勾配の屋根では、風や台風による影響が大きく、屋根材が周囲に飛散して、隣家に迷惑がかかる場合もあります。

以上の経緯から、釘について、ニチハ側もリコールを発表しましたが、すでに施工された釘の被膜状態は確認が難しく、腐食した釘すべてを交換できていません。釘の腐食は再塗装で改善できないため、ニチハパミールの再塗装は推奨されていないのです。

我が家はパミール?簡単な見分け方

ニチハパミールは、修繕せず放置していると、重大な危険につながります。たとえば、釘の腐食を放置していると、釘が屋根材を支えられなくなり、屋根材が落下してしまう危険があります。さらに、層間剥離を放置すると、建物の構造躯体に雨が侵入してしまい、建物の寿命を短くしてしまうこともあるのです。では、ニチハパミールとそうではない屋根材は、どのように見分けるのでしょうか。

まずは、ニチハパミールかどうかを確認するために、建物が施行された築年数を調べましょう。上述したように、ニチハパミールは1996年から2008年までしか製造されていません。そのため、1996年以前に建築された建物は、ニチハパミールではない可能性が高いといえるでしょう。つぎに、図面や仕上げ表にニチハパミールの表記がないか確認してみましょう。

ただし、図面上と実際に用いられている部材は異なる場合もあるため、目視でニチハパミールかどうか確認することが確実な方法です。なお、ニチハパミールは、屋根材の先端部にある凹凸の幅が等間隔で、表面には木目のような線が縦に施されています。また、屋根の劣化症状からもニチハパミールかどうか判別できます。

上述したように、ニチハパミールは劣化が進行すると層間剥離を起こし、屋根材がミルフィーユ状に剥離することが特徴です。

また、表面にクレーターのような穴あき症状や変色が発生することがあります。これらの症状が現れた場合は、ニチハパミールと考えていいでしょう。さらに、専用釘の錆びにより屋根材にズレが生じている場合も、ニチハパミールである可能性が高いです。ただし、屋根の劣化症状を確認するために、屋根に登って判断する必要があります。自分で点検することは危険を伴うので、専門業者に依頼し確認してもらうといいでしょう。

ニチハパミールのメンテナンス方法

一般的なスレート屋根は、定期的な塗装によって寿命を延ばすことができます。一方、ニチハパミールは上述したように層間剥離を起こしてしまうため、塗装でのメンテナンスができません。

そのため、葺き替え工事、もしくはカバー工法によるメンテナンスが必要です。葺き替え工事とは、既存のニチハパミールを剥がし、新しい屋根材を設置する方法です。葺き替えは、下地材も含めて交換できるため、結露の影響で傷んだ屋根一式を新調できます。

ただし、工期が長くなりコストがかかってしまうというデメリットがあります。カバー工法は、既存の屋根材の上に新しい屋根材を重ねるメンテナンス方法です。葺き替えと比べ費用を安価に抑えられるため、金銭的に魅力な選択肢といえるでしょう。

ただし、下地に強度がないと建物が屋根材の重みに耐えられなくなるため、下地材が劣化していないか事前に確認することが重要です。以上のように、ニチハパミールをメンテナンスする際は、葺き替えかカバー工法を検討するようにしましょう。

まとめ

今回は、ニチハパミールを塗装してはいけない理由と見分け方について紹介しました。ニチハパミールは、1996年〜2008年にかけてニチハが製造していた屋根材で、劣化によるクラックや剥がれが多数報告されています。また、層間剥離や釘の腐食が原因で、再塗装によるメンテナンスが推奨されていません。以上から、ニチハパミールは再塗装ではなく、葺き替えやカバー工法というメンテナンスが必要です。メンテナンスを行う際は、まず使われている屋根材がニチハパミールか判断する必要があります。判断のためには、建物が施行された築年数や図面、劣化症状を確認するといいでしょう。なお、自身では判断できないこともあるので、その際は専門家に確認してもらうようにしましょう。

おすすめ関連記事

サイト内検索
外壁塗装コラム